 |
|
ITの重要性が高まる中で、ITガバナンスの強化に取り組む企業が増えている。その背景には、従来の分散型システムを集中化して全体最適化と統合的な管理を強化しようとの狙いもある。こうした中で、CIOに課せられた役割も大きなものになっている。企業競争力向上のためのITの位置付け、そしてCIOが行うべきことを考えてみたい。 |
 |
集中化するシステムで求められる
ITガバナンスのさらなる強化 |
 |
 |
「会社は誰のものか」という議論が一時盛り上がったが、その中でコーポレートガバナンスという言葉をしばしば耳にした。議論の背景には、米国型経営と日本型経営との間のせめぎあいがあった。
一方、別の視点からITガバナンス強化への動きも注目される。経営全般に占めるITの役割が高まり、いまではあらゆるビジネスプロセスがITの基盤の上で行われるようになった。会計の帳簿から情報伝達や情報共有、さらには取引先との連携にいたるまで、IT抜きのプロセスはほとんどなくなったといえるだろう。
ITガバナンス強化の必要性が叫ばれる背景には別の理由もある。これまで部門ごとに構築・運用されてきた従来型システムを、多くの企業は集中化の方向で見直している。各部門で最適化を図ってきた姿勢を改め、ITに関する権限を中央に集めて、全体最適の視点で統合的な仕組みを構築しようというわけである。
ITガバナンスの中には様々な要素が含まれている。IT投資コストのマネジメントやIT資産のマネジメント(次回以降で詳述)などの重要テーマもあるが、以下ではビジネスとITとの整合性という観点から考えてみたい。経営とITとの整合性という観点から考えてみたい。
ビジネスとITが不整合である場合、それによって様々な問題が生じる。例えば、取引先との連携強化という方針を経営トップが打ち出したとしても、取引先とのインターフェースがシステム側に用意されていなければ、連携の効果は限定的なものにとどまるだろう。ある銀行は別の銀行との合併を検討した際、情報システム統合がネックと判断されて合併を見送ったという。ITがビジネスの選択肢を規定することもあるのだ。 |
 |
 |
先端技術や法制度の動向を見据えて
迅速かつ適切なITの準備を |
 |
 |
|
経営にとってITは不可欠の要素となったいま、ビジネスとITを橋渡しするCIOの役割も大きくなっている。
例えば、RFIDやICカードのような先端技術に対して、どのように対応するか。対応が遅れれば、ライバルに差をつけられ、ビジネスの競争力に悪影響を及ぼすだろう。この技術を「Suica」という形でいち早く取り入れたJR東日本は、輸送業務の効率化を進めただけでなく、その利用を駅周辺や街中の店舗にも拡大して新しいビジネスを創出している。こうしたように、企業の持つIT活用への姿勢が、ビジネスの可能性を大きく左右することもある。
また、社会環境の変化への対応という側面でも、ITの重要性が高まっている。その一例が、近い将来に法制化が検討されている日本版SOX法(米国企業改革法)である。すでに米国で導入されているSOX法は、企業に内部統制の強化を求めるもの。企業内部での不正を防ぐために、あらゆるプロセスを可視化し、コントロールできる状態にすることを求めている。これに手作業で対応することは困難であり、相応しいITの仕組みが必要になる。
あるいは、2005年4月に施行されたe-文書法。法的に義務付けられている文書の電子保存を定めるもので、文書保存コストの低減やビジネスプロセスの電子化による業務効率の向上が期待されている。こうした法制度改革に対応するためにはIT活用が不可欠である。
技術動向や法制度改革など、あらゆる環境変化の動きを見据えながら、経営の立場でIT戦略を策定する。このようなCIOの役割は、今後さらに大きくなるに違いない。 |
 |
次回:第2回「IT投資をいかにマネジメントするか」につづく |
 |
 |
 |
 |
 |
執筆者: 中島 洋
1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当した後、1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、『日経コンピュータ』、『日経パソコン』の創刊に参加。97年から2002年に慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。01年から04年に国際大学(グローコム)教授。現在、日経BP社編集委員、MM総研所長を兼務。 |
|
 |
|
|
 |
|